2015/04/03

ナガレホトケドジョウの棲む谷で


先日、久しぶりに、ゼミ生のMくん、Iさんと一緒にナガレホトケドジョウを採取しに行った。
 
ナガレホトケドジョウは環境省のレッドリストで最も絶滅の危険度が高い種に指定されており、Mくんは、生息地の保全のために必要な、生態に関する知見の収集に取り組んでいる。

私は風邪気味で本調子ではなかったが、初春の晴天の谷川は気持ちよかった。

Iさんは4月から新しくゼミに入ってきた学生で、両棲類や爬虫類、魚類をテーマにした研究がしたいらしい。

ところで、ずーっとゼミに入ってくる学生を見ながら思ってきたことがある。それは次のようなことである。
学生を動物が好きな学生には、大きく分けると、「パンダやキツネといった哺乳類系が特に好きな人」、「両棲類や爬虫類、魚類が特に好きな人」、「昆虫類が特に好きな人」に分けられる傾向がある。
Iさんは2番目の動物好きで、3番目の動物好きは、いわゆる「虫屋さん」と呼ばれる人だ(結構、機械のメカなんかも好きなことが多かったりして)。

ちなみに、「パンダやキツネといった哺乳類系が特に好きな人」は、動物の向こうに人を見る傾向がある人で、動物の中にかわいらしさや愛情などを感じたがる人ではないか(そういう場合が多い)というのが私の印象である。

以前の記事「絵と脳のモジュール構造」で、私は、脳のモジュール的構造、モジュール的働き方について書いたが、一番目の動物好きの人は、動物に対して、対生物専用モジュールと対人専用モジュールが同時に作動する傾向があり、三番目の動物好きの人は、動物に対して、対生物専用モジュールと対物理専用モジュールが同時に作動する傾向があるのではないかと思っている。

もう6年ほど前になるが、ゼミ学生のTくんは、卒業研究で、性差や年齢差と“どんな動物に関心があるか”にはどんな関係があるかについて調べた。ペット屋やホームセンターでのフィールドワークを行ったのだ。
その結果、虫や魚は男性や男の子のほうが強い関心を示し、イヌやネコ、ウサギ、ハムスターなどの哺乳類には、女性や女の子のほうが強い関心を示すことを数値として示した。
付け加えると、植物に対する関心は、圧倒的に女性のほうが高かった。

短絡的に結論を出すことは厳に慎まなければならないが、これまでの多くの先行研究の結果とも総合して考えると、「われわれホモサピエンスの脳は、狩猟採集生活に適応している」という考えが現在もっとも可能性が高いと思うのだ。
人類400万年の歴史の中で、道具を駆使して動物を狩るのは一貫して男性に偏った分担であり、植物の採集や乳飲み子の世話は、女性に偏った分担だったのだ。

ところで二番目のタイプの動物好き(両棲類や爬虫類、魚類が特に好きな人)はどうなのか。

結論から言うと、まだよくわからない。

ただし、・・・・やっぱりよくわからない。

そうそう、上の写真について説明しておこう。
一段目左は、鳥取県では数箇所しか知られていないナガレホトケドジョウの生息地である。たいていは、もっと急で幅の狭い谷川に生息しているのだが、この場所は珍しいケースだ。
一段目右は、私が採取したナガレホトケドジョウだ。平野部に生息するホトケドジョウに比べ、頭部が扁平なのが特徴的だ。
二段目の左は、Iさんが二番目のタイプの動物好きだからというわけでもないだろうが、谷川に網を入れているIさんの近くに一匹のヤマアカガエル(これも希少なカエルだ)が現れたときの瞬間を撮ったものだ。Iさんが近づくとヤマアカガエルは山のほうへ逃げていった。
二段目の右は、Iさんが見つけた、カワゲラの幼虫がカゲロウの幼虫を食べている瞬間を撮ったものだ。カワゲラの幼虫はたいてい植物食(枯葉などの腐食組織などを食べる)、カゲロウは肉食といわれているが、カワゲラの肉食性をまさに物語る出来事だ。私もそんな場面に出くわしたことはなかった。

先日の活動の一部を書いてみた。

野に出ればいろいろなものに出会う。

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