2015/05/12

アカハライモリの小さい小さい子どもたちの旅立ち

孵化後数ヶ月後の子ども。上の子どものほうが1週間ほど年長。子どもたちを見つけるためには、大変な努力が必要だ。

 昨日、ある知り合いの方から、「アカハライモリが産卵しました」というメールがあった。
 
そうだ。春だ。アカハライモリの「産卵」、「変態」、「子どもたちの水場を後にしての旅立ち」の季節だ。

 そして私は思いを馳せたのだ。
数年前まで、それまでほっとんど知られていなかった「水場を後にしての旅立ち」の後の子イモリたちの行動、生活を調べていた日々のことを(それほど大層なことではないけれど)。

下の写真が、私が調査場所にした河川敷の水場である。

 この場所で子どもたちは産まれ、幼生になり、変態し、そして自分たちが生まれた水場から広い陸地へと上がり、それから三年ほどは、水場にもどることはない。
 陸上での、まさに命をかけた成長の日々を送るのである。

 さて、では彼らは、具体的に、どんな場所で、どんな行動を行いながら、何を食べて生きているのだろうか。
 私は、彼らが生まれた水場の周辺の草地をしらみつぶしに探し回った。

 彼らは、日中は、たいてい、積み重なった枯葉と土の間、石と土のわずかな隙間などで静かに休んでいる。そして夜になると、餌をもとめて地面を移動しはじめる。
 
 よく動く個体で、一ヶ月で、30メートル近く移動する。
 イタチ、カエル、ヘビ、ハサミムシなどの昆虫・・・、たくさんの敵から逃れつつ、子イモリたちが食べるものは、主に、いわゆる土壌動物である。
 糞には、小さなアリやカタツムリ、ダニ、トビムシの未消化体部が確認される。


冬は、石垣などの間に潜んで、ただただ春の訪れをまつ。


 一年、二年・・・と、研究が進んでいくと、 だれも気がつかない河川敷の一画で、ほんとうに懸命に生きているアカハライモリたちの姿の一端が、はっきり見えてくる。

 そして、いっぽうで、悲しいことに、そんな河川敷も、護岸整備や道路の拡張で埋め立てられていく現実もある。アカハライモリの子どもも大人も、土に埋もれて死んでいくのだ。重機に踏み潰されて死んでいく個体もいるだろう。

 どんな仕事をする人でも、どんな生活をしている人でも、子どもでも大人でも、一度は、アカハライモリなどの小さな野生の生物の、その姿や行動や生活に直にふれてみて欲しいと思うのである。



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